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Chapter1 - episode1 ソラ


・・・・・・・・・・・


・・・



・・・その島は虚空に浮かんでいた。


その虚空に浮かぶ島の端から、中央に向かって競り上がるように、山が聳え立っていた。


山頂のさらに遥か頭上には一つの大きな星が煌々と輝いていた。


その輝きは眩いものだが、一種の冷たさも含んでいた。


その星の輝きが、この島の、これから起こることの、すべての起源だった。


天井の星の光は微かにしか届かず、島には凍てつく風が吹き荒んでいた。


大空を切り裂く鋭い突風は孤島に容赦なくぶつかった。


突風は、ぶつかっては島のへりに打ち消された。


島では季節はずれの雪が宙を舞っていた。


そこは、島の端にある大きな洞窟だった。


洞窟は、普段無人だった。しかし、今は無人のはずの洞窟に幾人もの人々が行き交っていた。人々は生活の音を立てていた。


洞内では、せめてもの暖をとるために所々で火が焚かれていた。


人々の表情は、困惑と哀しみ、そしてとにかく濃い疲労の色で埋め尽くされていた。


そんななか、焚き火から遠く、人の輪から外れた洞窟の端に、一人佇んでいる少女がいた。


ひとりの女が少女に気づき、見兼ねてわざわざ洞窟の端までいって、声をかけた。


女 「 お嬢ちゃん・・・? あなたも焚き火のそばにおいで。ここじゃ凍えちゃうよ。

女性は疲れた表情を隠すように少女に優しく精一杯の笑顔を向けた。


だが、少女は女と目を合わせようとせず、首を大きく振ると、洞窟のへりで屈みこんで、外空に顔をやった。


女性は察したような表情を浮かべ少女にそれ以上構うことはしなかった。


しかし女は、焚き火に戻った後もしばらく、心配そうな表情で少女の方をみていた。


人々の中に、大きな音にひどく怯える者や、火を極度に怖がる者もいた。


少女もその一人だった。


少女は洞窟のヘリで身を屈めて座り、冷気に身を晒しながら、じ・・・っと空を見つめていた。


気温は凍えるほど寒く、凍てつくような風が吹き上げていた。


雪の一つが、少女の鼻先に触れて、溶けていった。


だが、少女の瞳は鼻先で溶けた雪にさえ視線を移さなかった。


少女の瞳は、ただ、静かに虚空を見つめていた。


________


しかし、少女の虚ろな瞳に、眼前の雪が舞い散る空もまた、映っていなかった。


少女の眼前には、頭上の星からも光が降り注いでいた。


だが、そのとき少女が本当にいた場所は、降り注ぐ光さえ一切届かない、深い、深い闇の中だった。


その闇は、誰も少女を救い出すができないほどに深かった。


・・・少女の前には、立ち上がるきっかけさえつかめないほどの、深い闇が佇んでいるようだった。


________


その脳裏には、灼熱の炎とその中で助けを求める女の姿が繰り返し映し出されていた。


少女の網膜に、眼前の大空は像を結ばない代わりに、その脳裏には、灼熱の炎が燃えていた。


そして、少女の網膜には、紅蓮の炎の中で助けを求め、少女に手を伸ばす女の姿が繰り返し映し出されていた。


女は、傍で息絶えた男の亡骸を、抱きしめ、涙を流しながら、叫んでいた。


女 「 なんで?どうして? どうしてこんな!! なぜ? 

女 「 なんでよおおお!!!!

女の悲痛な叫びに、少女も泣きじゃくりながら、女の方に必死で手を伸ばした。


しかし、少女の足を押しつぶした壁の塊が、女に近づくことを阻んだ。


女は叫んだあと、しばらく突っ伏していた。


そして、女は顔を上げた。


炎に焼け焦がれながら、何かを悟った女は、傍で倒れた男の手を静かに握り、もう片方の手を少女に向けて伸ばしていた。


鬼の形相で叫んでいた女の顔は、今は、嘘のように静かに、優しく少女に微笑みかけていた。


女性は炎に巻かれた瓦礫に埋もれながら、少女に向かって言った。


女「 ソラ・・・!生きて!!

女 「 思っていたよりずっと早くて、そして、急だった。

女 「 これは、きっと運命なの。私たちは、あの「星」に行く。

そして、女は大粒の涙をこぼしながら少女に向かって叫んだ。


女 「空をみて! あそこから!あなたを見ている!!

女 「これからは今までよりも私たちはあなたの近くにいる!!

その叫びが脳内に再生されたとき、それまで微動だにしなかった少女の眼が微かに潤み、瞳から涙が一つこぼれ落ちた。


こぼれ落ちた涙は少女の首から下げられたペンダントのチャームにぶつかって砕けた。


そのペンダントのチャームにはライオンの紋章が象られていた。それは島で一番古い教会の紋だった。


少女の回想は、その後、男の手を握った女が炎に巻かれて焼けながら、崩れ落ちる瓦礫に埋もれていく場面で終わった。


また、凍てつくような一陣の風が洞窟のヘリに当たって砕けた。


突風は、碧色の少女の髪をかきあげた。


髪を逆だてるほどの、刺すような突風を受けても少女の眼は微動だにせず、その瞳は虚ろだった。


少女は俯いていたが、ふと、虚ろだが真っ直ぐな目で天上の星を見上げた。


そうして、こう呟いた。


ソラ 「 父さん、母さん ・・・わたしの顔、見える?

ソラ 「 ・・・わたしからは、見えないよ・・・。

少女の虚ろな瞳の奥には、だが、未だ深い闇しか見えなかった。


しかし、その深い深い闇のさらに奥底に、燻る種火のような炎があった。


その炎を灯しているものは、きっと、生命と呼ばれるものの強かさだった。


Chapter1 - episode2 ヤゲン ・ ギーン


・・・・・・・・・・・


・・・



凍える洞内で、側の洞窟の岩陰に隠れるように、ヒソヒソと話す3人の男たちがいた。


彼らは、洞内の様子など意に介さないように、たった3人で焚き火の周りを囲み、そこから離れようとしなかった。


焚き火の光が当たり3人の大きな影ができていた。洞内の人がいる場所からは、3人の影だけしか確認できなかった。


1人の男が大柄な別の男に話しかけた。


男 「 ヤゲン、フクロウの村のアジトをすぐに守りにいかねえと。あいつら、仲間の口を割らせてアジトの場所を知るのも時間の問題だぜ。

ヤゲンと呼ばれた男は、険しい表情で応えた。


ヤゲン 「 ダメだ。アジトはオレたちの全てだ。

男 「 そうだ。石があいつらの手に渡ったら次の取引に間に合わねえ。オレたちは本当に終わりだ。

ヤゲンと呼ばれた、大きい男が返した。


ヤゲン 「 ぬかったぜ。今度ばかりはオレたちの正念場だ。マジでこのままじゃ潰されるぞ。

ヤゲン 「 街の連中のことは知ったこっちゃないが、オレたちはどさくさに紛れて潰されて、それで終わりだ。オレたちが生きていようが、生きていまいが、誰も気づかねえ。

ヤゲンは壁に投影された自分たちの大きな影を眺めながら言った。


男 「 そうだ。オレたちはオレたちの世界を守るだけだ。

男 「 今度ばかりは大勢やられちまったから、報復しないといけねえ。

ゲン 「 ライオン街の本部で誰かが口を割ったら終わりだ。とにかくフクロウの村のアジトだけは守らねえと。

男が洞内の中心部をチラッとみて、苦々しい表情で言った。


男 「 チッ! それにしたってやりにくくて仕方ねえ。 なんで、ウサ公(自警団)のトップまでいるんだ。あいつらこんなときこそ闘うはずだろ。

ヤゲン 「 大方臆病風にでも吹かれたんだろう。あんな臆病者ども相手にするな!

男が、遠くにいる自警団のトップと呼ばれた男の方を見て言った。


男 「 それに、あいつの目は節穴だぜ。大事なときに役に立たねえくせに、祭り上げられて胸くそわりい!

男 「 まあ、気にすんな。あいつらはあいつらで闘うときは闘うだろう。あいつらの闘いなんてオレらには関係ねえ。

ヤゲン 「 そうだ。島を取り返すなら取り返すで勝手にやりゃあ良い。

男 「 だが、問題は侵略者どもにも見つかるわけにはいかないってことだな。

ヤゲン 「 フクロウの村にも武装した連中がわんさかいるだろう。クソ八方塞がりかよ!!

ヤゲンと呼ばれた男は思い切り洞窟の壁を叩いた。


壁を叩いた手からは、じわりと血が滲んだ。


男 「 ファミリアのやつら、まさかこんなときに総攻撃をかけて来るとはな。くそ、侮ってたぜ!あいつらの薄汚さを!!

男 「おかげでライオン・カルテルは、あのエイリアン共のせいで、ほぼ壊滅状態だ。

ヤゲン 「 あいつらはやってはならねえことをした。仲間の仇はぜってえとる!生かしてはおけねえ!

そうほぞを噛んだ男の腕には、大きなライオンのタトゥーが施してあった。


そのタトゥーはライオンカルテルと言われる組織の構成員の証だった。


1人の男の首筋ともう1人の男の腰のあたりにも、それぞれライオンの入れ墨が施してあった。


男 「・・・ライオンの牙は裏切りを許さない!

ヤゲン 「・・・ライオンの牙は報復の牙だ!

ヤゲンと、あとの2人の男は目を見合わせて頷いた。


ヤゲンの手の傷から流れる血がヤゲンの腕に棲むライオンにかかった。


その異様は、傷ついた獅子にも、大量の返り血を浴びたライオンにも、見えた。


洞窟の端で隠れるように話していたヤゲン達とは対照的に煌々と炎をたてる組み木を囲んで男達が我が物顔で話し合っていた。


男 「 ギーン様!自警団は、、、兎の騎士団は壊滅でしょうか!??このままではやつらにここが見つかってしまう・・!

ギーンと呼ばれた男 「 なにをいう! 「星」に忠誠を誓った鞠の軍勢は不滅の集団なり! なによりわしがいるうちは自警団は健在ということだ!かならずライオンの街は取り戻す!

男 「 おお!そなたは不滅の人なり。ギーン様がいれば鞠の騎士団は安泰だ!ライオンの街の奪還も時間の問題ということか!

男 「 だ、だが市長が・・・市長はヤツらに・・・。この俺の目の前で・・・。無念・・・。

ギーン「 市長のことは残念であった・・・。

そう言いながら、ギーンの内心では市長の死を種火とする、野望の炎が燃え盛っていた。


ギーン「 ライオンの街を奪還し、必ずや市長の仇を討つのだ!

男 「 オオッ! 目の前で市長を守れなかった無念、必ず晴らします!

男 「 そして、そのときはギーン様に市長を務めていただくほかありません!

ギーン 「 !

ギーン 「 ま、まあ、次の市長が正式に決まるまでの代理はやらざるを得まいな・・・。

ギーンの口元が微かに緩んだ。


女 「 ギーン様、 下の世界から援軍は来るのでしょうか 。

ギーン 「 来る! 星結晶が結ぶ我らと下の世界の絆はなによりもかたい。湖畔の国々から精鋭が押し寄せるだろう!! 鞠の騎士団との共闘は100年語り継がれようぞ。

男 「 おおっ!友軍が来てくれれば、ギーン様も百人力ですね!

ギーン 「 うむっ!もちろん鞠の軍団でなんとかできるが、友軍がおると心強いな! おそらく、少なくとも1千を超える大軍勢じゃろう!

男 「 1千・・いや2千来るかもしれません。軍勢とともに兎の騎士団を率いて自由都市を奪還ですね!!!

ギーン 「 う、うむ。ひょっとすると、2000の倍は来るかもしれぬぞ。

男 「 MRN(マウント・ラビット・ナイツ)は、奇跡の騎士ギーン様が率い、2・・・いや4千の軍勢の頭となるぞ!!!「鞠の軍団」が友軍を率いて怨敵をあっというまに亡骸にかえる。自由都市での血の海に浮かぶ大勝利が眼に浮かぶぞっ!!

男 「 おおおおっ!!

そうしなければ何かに押しつぶされてしまうかのように、焚き火の周りでは大歓声が上がった。


女 「 4000・・・? そ、そんなにこの島を襲った敵は強大なの?

女 「 じゃあ、もし援軍が来なかったら? 鞠の騎士は100人もいないのに・・・。

自分たちを鼓舞する雄叫びを側で聞いていた女は、誰にも聞こえない、消え入るような声で呟いた。


そのとき、見張りの男が大慌てでギーンのそばに駆け寄ってきた。


男 「 ギーン様、ハァハァ・・援軍を名乗る男が訪ねています・・・!身なりから・・ハア・・奴らではありません!

ギーン 「 おお・・・噂をすれば何とやら・・・・!! すぐに出来る限りのおもてなしの準備をするのだ。

男 「 しかし、ここに入りきらない大軍では?

ギーン 「 そ、そうだな。だが、出来る限りのことをしようではないか。

ギーン 「 そ、そうだな。だが、出来る限りのことをしようではないか。 ギーン 「 大軍勢に長旅の疲れを癒してもらい・・・彼奴等を一網打尽にする算段をするぞ!

Chapter1 - episode3 ディー


・・・


・・・・・・



ギーンは取り巻きたちとともに、洞窟の入り口まで、援軍を名乗る男を出迎えた。


ギーンは数百メートルある岩でゴツゴツした道のりを駆け足で出口に向かった。


その足取りに取り巻きたちは驚いた。


取り巻きの男「 ギーン様の足取り、なんてスムーズなんだ・・・!とても目が見えないとは思えない。

取り巻きの男 「 ああ。さすが鞠の軍勢を統括する無明の騎士ギーン様だ!

洞窟の入り口には男が一人、立っていた。


見張りの男 「 自警団長ギーン様、こ、こちらディー氏と名乗られています・・・!

見張りにディーと呼ばれた男は赤い下の世界での正装を羽織り、澄ました表情で微笑みを浮かべていた。


ギーン「おおっ!このようなところまでお越しいただきありがとうございます! そ、それで、大軍を率いておられるようには見えませんが、あなたは使いの方ですかな?

ディー 「 大統領府・シニア・アドバイザー、エイリアス・エネルギー・インダストリー 防衛部門顧問、ディー・エイリアスと申します。

ギーン 「 エネルギー・インダストリー ?

ディーの自己紹介に、ギーンはキョトンとした表情を見せた。


だが、すぐに取り直して、一番重要なことを聞いた。


ギーン 「 援軍はどこですかな? ここには入りきらないでしょう。

ディー 「 入りきらない?ー

ギーン 「 ひょっとして、もう、どこかで交戦中ですかな?

ディー 「 交戦中 ?

ギーン 「 はは、ディー殿も人が悪い。 4・・・いや、8千の大軍勢のことですよ。

ディー 「 8千の大軍勢?

取り巻き「 そうだな、外にも大軍の気配がしないから、本隊は遠くで息を潜めているのかも。

取り巻き 「 でも、ディー殿には御付きの人も誰もいないぞ・・・?

ギーンたちの期待に応えるように、ディーは言った。


ディー 「 何か勘違いされているようだ 。

ギーン 「 勘違い?

ディー 「 ・・・ 来たのは私一人ですよ。後にも先にも、ここには、私しか来ません。

ディー 「 島を救うのはあくまでもあなたたちですよ。

沈黙が辺りを長い間支配した。ギーン達は絶句し、長い長い時間言葉を一言も発せずにいた。


ディーは微笑しながら、その様子をじっと伺っていた。


Chapter1 - episode4 ジオ


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・・・・・・



見張り 「 た、大変です!お、男が一人向かって来ました!責任者に、ギーン様に会わせろと言っています!

絶句してギーン達が立ち尽くす端の洞窟の入り口にその男は突然現れた。


ギーン 「 な、なに? よし、よく身体検査をしろ!!

見張り 「 そ、それが・・・!もうここに!

そういうと、見張りの男の後ろから突然男が姿を現した。


男はボロボロの出で立ちで服や体躯のあちこちが焼け焦げていた。


唖然とするギーン達に男は言った。


ジオ 「 私はジオ・・・! やっとここまで来れた・・・! 遥か遠方より、あなた方の助太刀に参った・・・!

ジオが述べるか述べ終わらないかの瞬間、ギーンの護衛の一人がジオの顔面目掛けて棍棒で思い切り殴りかかった!


護衛 「 侵略者め!!よくもぬけぬけとここに現れたな!!

不意をつかれたジオは微動だにできず棍棒はジオの顔面にクリーンヒットした。


ジオ 「 グァッ !

怯んだジオをみた他の護衛もジオに躍りかかり、残りの護衛はギーンを囲いこんだ。護衛はギーンを起点に放射状に防御姿勢をとった。


ギーン 「 ・・・ よくもわしらの島を踏みにじってくれたな悪魔どもめ!

怯程なくして力なく取り押さえられたジオの面前に立ってギーンはジオを問いただした。


ギーン 「お前、なんで一人なんじゃ?!

ジオ 「 違う、おれは1人じゃない! オレの後ろにはおれについて来てくれた総勢80人の部下達がいる!見えないか、俺の肩に宿るあいつらが!

ギーン 「 ま、まさかお前は囮で仲間が取り囲んでおるのか・・・?

ギーンは、ジオの言葉に青ざめた。


ギーン 「 くそ、卑劣な!まずはお前から片付けてくれる!

ジオ 「 違う!おれは一人だ! そうじゃない!

ギーン 「 こ、こやつ!自分から白状しておいて、まだ騙そうとしておるのか! ゆ、許せん! 愚弄じゃ!

ギーンが声を荒げるのと同時に護衛がジオの腕を絞り上げた


ジオ 「 グオオオオ!

ジオ 「 まて!聞け! ど、同胞が迷惑をかけた! それは誠に申し訳ない ! しかしここで無駄死になどしたらオレは部下たちになんと言えばいいか!

ギーン 「 ど、同胞・・・! 部下・・・ や、やはりお前・・・!

ギーンはいよいよ顔面蒼白となった


ジオ 「 ま、まて!おれは同胞の誤りを正しに来たんだ!!あ、あなた方が国を取り返すのを手助けしたい!!

ギーン 「 このうえ虚言を弄するか・・・!!

ギーン 「 ええい、わしが自ら手を下してくれるわ・・!

ギーンがジオに殺意を向けたそのとき、静かにディーがギーンに歩み寄って問いかけた。


ディー 「 お取込み中のところ申し訳ないが、私との話の途中ではありませんでしたかな?

ディー 「 そろそろ本題に入りましょう。

ディー 「 ・・・商談です。

ギーン 「 ・・・商談・・・?

ギーンは、突如割って入って来たディーの口から出た言葉に、キョトンとした表情をみせた。


Chapter1 - episode5 ガーディアンズ


・・・


・・・・・・


ギーン 「 これはこれは、ディー殿 。 商談とはまたご冗談でしょう。我々は今、状況的にビジネスのことを考える余裕がないことはお分かりでしょう・・・

ディー 「 あなた達と、わたしたちの友情をより強固にしましょう!

ディー 「 今日我々が交わした絆は永遠に詠われるでしょう。

ギーン 「 それはありがたいお申し出!

ギーン 「 それで、具体的には・・・ どういうお申し出なんですかな?

ディー 「 いまあなた達に一番必要なものをお持ちしました。

ディー 「 ' 力 ' です。

ギーン 「 ' チカラ ' ・・・?そ、それは是が非でも必要です!

ギーンは生唾を飲んだ。その瞳は期待に輝いていた。


そのとき、洞窟内を一陣の風が駆け抜けた。


風が吹き抜けた刹那、洞内の冷たい空気がピンとより一層張り詰めた。


ディーは微笑を絶やさずギーンに語りかけた。


ディー 「 まずはあなたたちの運命をその目で見て頂きたい。

ディー 「 あなた達に手にして頂く`チカラ`の一部があなた達の前に姿を現します。

ギーン 「 むむ!見定めねば。・・・この盲いた目でも、皆の運命を見定めて見せよう!

風が吹き抜けた刹那、洞内の冷たい空気がピンとより一層張り詰めた。。


ディーは微笑を絶やさずギーンに語りかけた。


ディー 「 まずはあなたたちの運命をその目で見て頂きたい。

ディー 「 あなた達に手にして頂く`チカラ`の一部があなた達の前に姿を現します。

ギーン 「 むむ!見定めねば。・・・この盲いた目でも、皆の運命を見定めて見せよう!

洞窟の天井は大きく穿たれ、頭上の星から放たれる光が洞内に降り注いでいた。


ディーが静かに手を頭上に掲げた。掲げた手の指は、洞内の天井を指していた。


ディーの指の先にある穿たれた天井の`ヘリ`は高く、人が容易に行けるような場所ではなかった。


男 「 ・・・!?

ディーの指の先を辿った男が、その天上のヘリに、`何か`いることにいち早く勘付いた。


男 「 あ、あんな高いところに何かいるぞ!

男はそう言いうと体の芯から得体の知れない寒気が沸いてくるのを感じた。


そして、天井の`なにか`をよく確認しようとして男は、天井の何かと目が合った・・・!


男 「 ひっ!

男はそういうと腰が砕けてへたり込んでしまった。驚いたのではなく、`何か`の底の知れない眼光に射すくめられたのだった。


洞内に、天井の`何か`の正体を知る者がいた。


・・・平伏した者、ジオだった。


ジオ 「 あ、あの禍々しい悪魔どもを連れてきたのか・・・そんな必要は絶対にない・・・!

ジオ 「 あの姿格好だけは、許すことはできん。いつか、化けの皮を剥がしてやる・・・!

拘束された者`ジオ`は青ざめた、しかし、激しい怒りの表情で天井の影を厳しく睨みつけていた。


ジオ 「 神の使徒を装った悪魔め!お前たちは確かに力になるだろう!だが、お前達が我が同胞をこれ以上殺戮するところを見過ごすわけにはいくまいぞ!

ジオ 「 この命に変えてもだ!

ジオは、天井の`何か`に強い敵意を表明した。


しかし、ジオの顔からは血の気が失せ、恐怖と怒りが入り混じった表情を浮かべた顔には脂汗がにじみ出ていた。


その影は、2本の足で立っていた。


女 「 天井から伸びる見えない手で心臓を鷲掴みにされているみたい・・・

女が代弁したことを、洞内の全員が感じていた。


男 「 おい、あの影の頭のうえ、何か飛んでるぞ・・・おぞましい・・・!!

女 「 遠くて良く見えないわ・・・!!

天井に穿たれた大穴の縁に屹立し、洞内を凝視するその影の頭上と天上の星の間に広がる空を“何か”が悠々と駆っていた。


? 「 周囲に敵の姿なし、ゆっくりとお披露目会を続けると良いフートフート・・・

飛び回る影は、何か声のような信号のようなものを発していた


男 「 よくわからないが、空のあいつは、天井のあいつに信号を送っているのか?確かにあんな空高くから偵察していれば島の大半は見渡せるだろう。

女 「 得体が知れないけど理にかなってるね・・・

ディー 「 そんなに忌むべき者たちではありません。彼らはあなたたちの運命の行進を先導し護衛する者たちですよ。

ディー 「 遠いから怖く感じるのかもしれない。もっと近くに来させましょう。

ディーが島の者たちに向けた表情から微笑みを絶やすことはなかった。


ディーが島の者たちに向ける眼差しが優しさを纏うことも決してなかった。


ディー 「 プラクシス、正義の執行者よ!

ディー 「 降りてこい 。 `攻め`の代弁者。

ディーが言い終わるか言い終わらないかの刹那、天井の影は天井に穿たれた大穴の縁(へり)から跳躍し、洞内の岩床へと向かう空間に身を踊り出した。


スタッ!


その巨体からは想像もできない軽やかさで、影は着地した。


スッ!


そして、その影は、すっくと立ち上がった。


男 「 ヒッ!でけえ!!

影の身の丈は人の数倍はあった。


プラクシスと呼ばれた影「 空を飛んでいるのは仲間だロア。 周りに敵はいないから安心しロア

女 「 ち、近くでみると意外とかわいい顔をしているのね?

プラクシス 「 外にも仲間がもう一体いるロア。ここで守られて居ロア。

影の発した言葉に場の空気は少し和らいだ。


男 「 ・・・悪いやつじゃないのか?

女 「 ・・・顔もライオンみたいで可愛いし

女 「 でもどうしてだろう・・・足の震えがとまらない・・・

女 「 体の底から悪寒が湧き上がってくる感じ。

男 「 さ、寒いからだろう。ここは底冷えするからなあ。

女 「 とにかく親しみが湧くわ

男 「 今度おれと飲みに行くか?

人々の近くに屹立した巨躯はその親しみやすい外観から人心を掌握したようだった。


だが、洞内は無数に焚かれた篝火により震えるような寒さではなかったが、誰もがガタガタと震える足を止めることはできなかった。


ディー 「 さ、ギーン殿、皆さん、この者があなた達の剣となります。

ギーン 「 こ、この可愛らしい御仁が⁈戦力になるんですかな?

ディー 「 島の奪還は成ったも同然です。

ギーン 「 ん?そういえば聞いたことがある。

ギーン 「 なんでも下の世界では、人形型の兵器が猛威を振るったとか・・・

ギーン 「 確か名を、‘ガーディアンズ’・・・

ディーは、ゆっくりと頷いた


ギーン 「 うおおおおおお!!!勝てる!奪還のきっかけにはなるぞ!!

島でも上役のギーンは、下の世界の情報も持っていた。


しかし、1人興奮するギーンを取り巻きはキョトンと見守っていた。


取り巻き「ギーン様が雄叫びをあげているが、あいつらが戦力になるとは思えねえ。

取り巻き 「ああ、あいつらを頼りにしたら無駄死にになるのは目に見えてるな。

ディー 「 もちろん、命運を確実に握る戦力に、それ相応の値段がつくことは避けようがありませんが・・・

ギーン 「 ん? まさか金を取るおつもりではありますまい。

喜び勇んでいたギーンの顔から笑みが消えた。


ディー 「 はは、もちろん、すぐにとは言いません。

ディー 「 そもそも、あなた達には、平時でも払えない金額ですよ。彼らの使用料はよほど裕福な国家でやっと払えるくらい高い。

ディー 「 当たり前です。国同士の争いの結果さえ変えてしまうような`チカラ`ですから。国家が無理をしてでも借りるだけの価値は十分ある。

ディー 「 ですが、今すぐお代を頂戴出来なければ、力を貸せません。

ディー 「 ・・・とは申し上げられません。それはあまりに可哀想でしょう。

ディー 「 この島をいったん預けて貰えればお金は少しずつ返して頂く形で構いませんよ。

ギーン 「 ・・・島を担保に?・・・島を担保にと言っておるのか!貴様っ!

ギーンはついに目を剥いてディーを怒鳴りつけた。


現在ストーリーはここまでです。



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